流通関係の仕事をしている方は過積載にとても敏感です。
過積載は大きな事故に繋がりやすく、違反してしまうと厳しい罰則が科せられます。
運んでいるのは荷物だけでなく、安心と安全だということも忘れないようにしたいですね。
今回は過積載についてご紹介いたします。
■過積載について
まずは過積載の定義と、なぜ最大積載量が決まっているのかをご説明いたします。
・過積載の定義
トラックの最大積載量は道路交通法によって定められており、制限を超えて荷物を積み込むことを過積載といいます。
最大積載量は下記の計算式で求めることが可能です。
最大積載量=車両総重量-(車両重量+乗車定員数×55kg)
※乗車する一人当たりの体重は55kgとされています。
最大積載量を計算する際の注意点として、荷物と車両の重さ以外にガソリンや乗車定員が最大限の状態で計算しなければなりません。
・最大積載量が決まっている理由
道路や橋は使用目的によって強度が異なります。
たとえば、歩道橋と車が通る橋では使われている素材も規模も全く異なります。
過積載のトラックが何台も通ると、いくら頑丈に作られた橋でも設定強度を超えて思わぬ事故や破損に繋がりかねません。
ほかにも荷物の落下やブレーキがうまく利かずに追突事故を起こす可能性もあります。
最大積載量は大きな事故を避けるために定められているのです。
■最大積載量はトラックごとに違う
トラックの大きさごとに、最大積載量をご紹介いたします。
・小型トラックの積載量
小型トラックは「2tトラック」または「3tトラック」とも呼ばれるトラックで、免許の取得時期によっては普通免許でも運転できます。
最大積載量は、3t未満です。
・中型トラックの積載量
中型トラックは「4tトラック」とも呼ばれるトラックで、最大積載量は3t以上6.5t未満です。
中型トラックにはクレーンやテールゲートリフターなど、重量のある装置が架装されている場合が多いため、過積載にならないよう注意が必要です。
・大型トラックの積載量
「10tトラック」とも呼ばれる大型トラックの最大積載量は、6.5t以上です。
トレーラーや平ボディ、ウィングボディなど多様な形状が存在するため、最大積載量も車両ごとに異なります。
なお、車両総重量は最大25tまでと決められており、架装の重量が軽いほど多くの荷物を運べます。
・増トントラックの積載量
増トントラックとは、中型トラックの最大積載量を8tまで増やしたトラックのことです。
コンパクトながら大型トラックと同程度の積載量を確保できるうえ、大型トラックを購入するよりもコストを抑えられるメリットがあります。
ただし、運転するには大型免許が必要で、維持費は中型トラックよりも若干高めです。
■過積載の罰則について
過積載をしてしまった場合、罰則を受けたり責任を問われるのは誰になるのでしょうか?
この項目では過積載の罰則についてご説明いたします。
・過積載の罰則内容
罰則は積載量の割合で決められます。
5割未満の場合、5割以上10割未満の場合、10割以上の3つに分類されています。
5割未満 5割以上10割未満 10割以上
違反点数 2点 3点 6点
反則金 3万円 4万円 なし
罰則 なし なし 6ヶ月以下の懲役
または10万円以下の罰金
酒気帯び運転の場合は、違反点数がさらに上がります。
・過積載は誰の責任?
上記の罰則は違反したドライバーに対するものです。
過積載の責任はドライバーだけでなく、ドライバーが勤める会社と、運送を依頼した会社にもあります。
「運行管理者の法令違反」というものがあり、会社がドライバーに過積載を命じていた場合は運行管理者資格者証の返納と資格取り消し処分がくだされます。
依頼した運送会社には再発防止命令と6ヶ月以下の懲役、または10万円以下の罰金が科せられます。改善されない場合は、過積載車両の運転要求禁止、協力要請書、警告書および荷主勧告が発動されます。
■過積載の状態で走行するとどうなる?
トラックの過積載は、命を危険にさらす行為と同じです。
過積載による数々の危険性について、ご紹介いたします。
・制動距離が長くなる
過積載によりトラックの重量が増えると、進行方向にかかる力が強くなるため、ブレーキを踏んでから停止するまでの制動距離が長くなります。
また、重量が増えた分だけ衝突したときのダメージも大きくなることから、過積載ゆえの大事故に発展する危険性が高まるでしょう。
・バランスが崩れる恐れ
過積載の状態で走行すると、荷物の重さによって車体が左右に振られてしまい、ハンドル操作が難しくなります。
カーブをうまく曲がりきれず、対向車線に大きくはみ出したり横転したりと大変危険なため、注意が必要です。
・トラックの寿命を早める
過積載は、車軸や足回り、ブレーキなど、あらゆる箇所に大きな負荷を与えます。
繰り返すと、動作が鈍くなったり何度も故障したりと、業務の効率化を狙うはずがかえって逆効果です。
また、高速道路を走行中にトラックが不具合を起こすと、大きな事故を招く可能性もあります。
■危険!ダンプの過積載による事故
運送業界では、過積載が原因とされるダンプの事故が多発しています。
ダンプの過積載が増えた背景と、車両サイズごとに定められた最大積載量の目安をご紹介いたします。
・ダンプの過積載に注意
ダンプの過積載が増えたとされる理由の一つに、過当競争の激化が挙げられます。
なかには、1台でも少ない台数で多くの荷物を運んで、不当な利益を得ようと考える人もいるほどです。
また、過積載をしてでも自社のコスト削減を図ろうとする事業者がいるのも、ダンプの過積載が横行する原因と言えるでしょう。
・ダンプの積載量
ダンプの車両サイズは、「小型」「中型」「大型」の3つに分けられます。
各サイズの最大積載量は以下の通りです。
- 小型ダンプ(通称「2tダンプ」):最大積載量2~3t程度
- 中型ダンプ(通称「4tダンプ」):最大積載量3~5t程度
- 大型ダンプ(通称「10tダンプ」)最大積載量8~11t程度
※「6tダンプ」「8tダンプ」などと呼ばれる、積載量を増やした増トンダンプも存在
どのような理由があっても、規定の積載量を目安に安全な運行を心がけましょう。
■過積載を防ぐには

過積載の罰則は、ドライバーを含む人々の安全を守るために定められています。
思い処罰にもかかわらず繰り返される過積載。
どうすれば過積載をなくすことができるのか、なぜ過積載がなくならいのかをご紹介いたします。
・トラックの大きさを見直す
使用しているトラックが小型・中型の場合は大型車への乗り換えを検討しましょう。
大型車であれば、一度に運べる荷物の量が増えますし、効率化を図れます。
・ドライバーの意識改革を行う
トラックに乗り慣れている方も、今一度、安全面について考え直す機会が必要かもしれません。ドライバー同士で意識を高めれば、団結力も増します。
・増トントラックを使う
大型トラックは小回りが利きません。
市街地や狭い道路を走る際は、大型トラックが不便になることもあります。
そこでおすすめなのが増トントラックです。
小回りが利いて多くの荷物を運べる増トントラックを考えてみてはどうでしょうか。
・なぜ過積載はなくならないのか
携帯電話が普及したこともあり、過積載をしていればすぐに拡散されてしまいます。
運送会社はコンピューターを導入して荷物の重さを記録しているため、過積載を行った場合はバレてしまいます。
しかし産廃業や建設業は、トラックに次々と荷物を運びこむので最大積載量を超えてしまうことがあります。
現場に監督職員を配置するなどの対策をとっているところもありますが、業界全体の意識が変わるまではまだ時間がかかりそうです。
過積載を続けると、ブレーキの利きが悪くなり、衝突、転倒などの事故を招きます。
特に大型車の事故は規模が大きく、人々を恐怖や不安に陥れます。
- ドライバーは運転のプロとして過積載への意識を高く持って安全な走行を心がけましょう。