クレーンは建設や土木、工場などの作業現場に欠かせない重機です。用途に合わせて使い分けられるよう、固定して使用するものや原動機を設置するもの、移動ができるものなど、さまざまな種類があります。
そこで今回は、移動ができる「移動式クレーン」についてご紹介いたします。種類の多さに驚くかもしれません。
■移動式クレーンの定義
クレーン安全規定では、移動式クレーンを「動力によって荷物を吊り上げて水平に運搬できる機械装置で、搭載した原動機を使って不特定の場所に移動させることができるもの」と定めています。
人力で荷物を吊り上げるものや、吊り上げ荷重が0.5t未満のものは、移動式クレーンに分類されません。
■主な移動式クレーンの種類
移動式クレーンには、さまざまな種類があります。
・トラッククレーン
トラッククレーンは小型から大型まで幅広く、あらゆる分野で利用されています。
<トラッククレーン>
大型のトラッククレーンは、運転席が走行用とクレーン操作用に分かれているのが特徴です。専用キャリアに旋回サークルやアウトリガーを装備し、その上に上部旋回体と呼ばれるクレーン装置の架装をしています。
ジブの駆動は、油圧式と機械式に加えて複合式も存在し、ジブが伸縮するものを油圧式、しないものが機械式と大別されています。
<車両積載形トラッククレーン>
小型のトラッククレーンは、平ボディのシャーシを補強し、運転席と荷台の間に小形のクレーン装置の架装をしています。
クレーン操作は車体の側面で行いますが、最近では安全性を考慮してリモコン式や無線操作式も多く出回っています。
<レッカー形トラッククレーン>
トラックのシャーシを補強し、アウトリガーやクレーン装置の架装をしています。通常のトラッククレーンよりもジブが短く、10mほどしかありません。
主に交通事故や事故車の救援作業などで使用されており、シャーシの後部には車両をけん引するための装置が取り付けられています。
<オールテレーンクレーン>
オールテレーンとは、「全地形対応」を意味します。公道と不整地の両方を走行でき、トラックとラフテクレーンの走行性能を併せもつ移動式クレーンです。
運転席とクレーン操作席が別々に配置されており、吊り上げ荷重100t超の高い吊り上げ能力を誇ります。
四輪操舵ができるので、大型ながら旋回性に優れているのも特徴です。
・ホイールクレーン
一般的にホイールクレーンは、1つの運転席で走行操作とクレーン操作の両方が行えるタイヤ付きの移動式クレーンを指します。
<ホイールクレーン>
車軸を備えた専用台車の上に、クレーン装置の架装が施されています。車輪は三輪式と四輪式があり、狭い土地での操作性に優れているのが特徴です。
また車体を安定させるため、ほとんどのホイールクレーンにアウトリガーが取り付けられています。
<ラフテクレーン>
オールテレーンクレーンのように旋回性に優れているため、不整地でも安定して走行できます。車両のサイズは通常のトラックと変わらないため、狭い土地での作業で活躍します。
・クローラクレーン
足回りにクローラ(無限軌道)を装備した移動式クレーンで、クローラが転がることで走行できる仕組みです。走行速度は時速1~3kmと遅く、公道では自走できません。
タイヤ式に比べて接地面積が広く、安定性に優れているため、不整地や軟弱な地盤でもスムーズに作業を行えます。
・鉄道クレーン
レール上を走行できる車輪をもった台車に、クレーン装置の架装があります。
主に保線作業の荷役業務や救援業務などで使用されますが、最近ではレール用の車輪を取り付けたトラッククレーン(軌陸車両)が主流です。
・浮きクレーン
浮力のある長方形の台船に、クレーン装置の架装が施されています。
船体は自航式と曳航(えいこう)される非自航式があり、クレーン装置は旋回するものとしないもの、ジブが起伏するものと固定されたものがあります。
港湾や河川、海上の土木工事や荷役業務など、さまざまな作業で使用される移動式クレーンです。
移動式クレーンにはさまざまな種類があり、特徴や用途によって細かく分類されています。移動式クレーンを見かけた際は見比べてみると、面白い発見があるかもしれません。