トラックについているエアブレーキは操作が難しいと思う人が多くいます。
エアブレーキの仕組みやコツを知ることで、もしかしたら苦手が改善できるかもしれませんよ。
今回はエアブレーキの仕組みや注意点についてご紹介したいと思います。
エアブレーキとは
乗用車などに用いられているブレーキは「ディスクブレーキ(フロント搭載)」と「ドラムブレーキ(リア搭載)」があり、どちらも油圧式ブレーキです。
対して大型車などを中心に搭載されるエアブレーキは、圧縮した空気を利用してブレーキシリンダーを動かし、減速します。
エアブレーキの特徴
大型バスや大型トラックのほか、電車や飛行機でも使われています。トラックやバスからプシュッという音が聞こえることがありますが、あれはエアブレーキを解除した際にエアーが抜ける音です。
■エアブレーキの仕組み
エアブレーキの仕組み
エアブレーキはブレーキペダルとブレーキシリンダーの間に高圧の空気を満たしています。ブレーキパッドを踏むとエアタンクからブレーキチャンパーに圧縮された空気が送られ、空気圧がブレーキディスクをホイールに押さえつけ減速します。
油圧ブレーキとの違い
油圧ブレーキは乗用車に採用されているブレーキです。
ブレーキペダルを踏むとマスターシリンダー内で油圧によって真空状態が生まれ、ディスクブレーキやドラムブレーキなどに干渉することで減速する仕組みになっています。制動力はエアブレーキに比べて低いため、小型のトラックで使われています。
エアブレーキとの違いは、ペダルを踏んでからブレーキがかかるまでの時間です。
エアブレーキは高い制動性を持つ反面、一気に踏みこむと急ブレーキのようになってしまい非常に危険です。
油圧式は早く止まり、扱いがエアブレーキよりも簡単なので大衆向けになっています。
なぜエアブレーキが必要?
大型車は重量がある分、制動性の高いブレーキでなければ十分な効果を発揮しません。
普通自動車で使われている油圧式ブレーキは倍力装置を使うことでブレーキの力を高めていますが、大型車では倍力装置よりも大きな力が必要になります。
そのため、液体よりも圧縮率が高い空気をブレーキが採用されることになりました。
エアブレーキは油圧式ブレーキよりも大きな力を効率的に生み出すことができます。
■エアブレーキのコツと注意点
エアブレーキの踏み方
エアブレーキは高い制動性を持つため、トラックの荷物が少ない状態では効きすぎることがあります。反対に、たくさんの荷物を載せた状態ではゆっくりとしかブレーキが利かなくなります。
車体が軽いときに乗用車の感覚でブレーキを踏むと、タイヤがロックされるかアンチロックブレーキシステムが作動して急ブレーキとなってしまいます。
そのため、乗用車のように足先で操作するのではなく、足裏全体で踏むようにするのがコツです。ブレーキの利き具合は体感による確認になります。
・クラッチの活用
クラッチとは、エンジンの力をトランスミッションに伝えるための動力伝達装置で、発進や停止、変速時に使います。
たとえば、カーブを曲がる場面では手前でエアブレーキを踏んで十分に減速し、クラッチでシフトダウンをした後、ゆっくりと曲がりましょう。
手前で速度を落としておくと曲がるときにトラックが安定するので、エアブレーキの使用回数を減らせます。
・トラックの総重量
エアブレーキの効き具合は、トラックの総重量によって変わります。
そのため、荷台が空の状態では急ブレーキがかかりやすく、反対に積載量が多ければ利きにくくなるので、積載量に合わせた使い方を意識しましょう。
・エア切れにも注意
エアタンク内の圧縮空気が不足すると、エアブレーキが正常に機能しません。
制動力を失ったトラックは運行中に大事故を起こす恐れがあるため、圧縮空気の残量には注意しましょう。
また、より重大なトラブルが、エア漏れです。
エンジンを切った際に空気の抜ける音が聞こえたら、すぐ修理に出しましょう。
■トラックを運転するポイント
車体が大きいトラックは、乗用車の運転よりも注意が必要です。
トラックを運転するときのポイントをお伝えいたします。
・左折
左折をするときは、少し前へ進んでから、素早くハンドルを切りましょう。
乗用車と同じ感覚で左折すると、後輪がガードレールや縁石に接触して危険です。
また、狭い交差点で左折をするときは、対向車や後続車に注意して、車体を少し右に膨らませてから曲がりましょう。
・右折
トラックは車体が長いので、急がずに対向車の切れ目を見極めてください。
ハンドルをすぐに回すと、右側で停止している車に接触する恐れがあるので危険です。
左後方の車に注意しながら、車体を少し左に膨らませた後、ゆっくりとハンドルを切りましょう。
・バック/方向転換
バックや方向転換は、形状や架装により周囲が確認しにくくなるので、難易度が上がります。
バックをするときは、後輪が曲がり角に近付くようハンドルを切り、方向転換をする方向と反対側に寄せながらバックをしましょう。
特に、狭い道では前進するときに曲がりきれなくなるので、注意が必要です。
・排気ブレーキの使い方
排気ブレーキは、エンジンブレーキの減速を補助する役割をもちます。
ハンドル付近にあるスイッチを走行前に入れておくと、アクセルから足を離したときに自動で作動する仕組みです。
重量物を積んだ状態でフットブレーキを多用すると、部品の消耗や効力の低下につながるので、排気ブレーキを上手に活用しましょう。
なお、排気ブレーキの解除はスイッチを操作するほか、アクセルを踏む、クラッチを切るなどの動作でも可能です。
ただし、排気ブレーキを常に使うとエンジンに負担がかかるため、必要なときだけ使いましょう。
■運転初心者が注意すべきこと
大型免許を取って間もないうちは、運転に不安を感じるでしょう。
大型トラックの運転初心者が注意すべき点をご紹介いたします。
・車体の大きさ
乗用車よりも大きいと理解していても、運転に慣れてきた頃が最も油断しやすい傾向にあります。
そのため、緊張感を忘れずに集中力を維持することが大切です。
・死角の多さ
大型トラックは死角ができやすいため、周囲に人の気配がないかを慎重に確認しましょう。
また、左後方も見えづらいので、左折時や発進時には注意が必要です。
・車間距離
重量は制動距離の長さに比例するため、多くの荷物を積む大型トラックはブレーキを踏んでもすぐには止まれません。
前を走る車と十分に距離を空けて走行しましょう。
・オーバーハング
タイヤからはみ出た車体の部分を「オーバーハング」といいます。
大型トラックは右左折をするときに荷台が反対車線に飛び出しやすいので、周囲の車と接触しないように注意しなければなりません。
ハンドルを切るときは、ミラーで周囲の状況をしっかりと確認しましょう。
・エアブレーキ
エアブレーキは油圧ブレーキと比べて制動力が高いので、同じ感覚で踏まないよう注意が必要です。
また、エアブレーキは積載状況によって効き具合が変わるため、慣れるまでは操作が難しく感じますが、仕組みを理解すると使いこなせるでしょう。
絶対NG!エアブレーキのバタ踏み
エアブレーキはブレーキペダルとブレーキシリンダーにある空気を圧縮して使うので、何度もブレーキを踏み続ける「バタ踏み」をすると空気が全て抜けてしまいます。
エアブレーキは圧縮した空気を使い回すことができないので、空気を全て使い切るとブレーキが作動しなくなります。
国土交通省が警告文を出すほどバタ踏みが原因の事故が多くあります。
適切なブレーキの使い方ができることが優れたトラックドライバーであるといっても良いのかもしれません。
エアブレーキは扱いが難しいですが、上手く使えなければ安全な運転ができません。自分や他の人の命を守るためにも、安全運転とエアブレーキを上手く使うように努めたいですね。