トラックのDPFとは?故障の症状や原因などをご紹介

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DPF

トラックを運転している方なら馴染みのあるDPFですが、故障してしまうことがありますよね。まだ故障したことがないという方も、これからのために故障について知っておくことをおすすめします。

今回はDPFの故障の症状と原因についてご紹介いたします。

■トラックのDPFとは

・DPFとは

正式名称を「ディーゼル・パティキュレート・フィルター」といい、頭文字をとってDPFと呼ばれています。

DPFはディーゼルエンジン搭載のトラックが出す黒煙(排気ガス)内の有害物質である粒子物質(PM)をフィルターで補集し、大気中に有害物質が吐き出されないようにする機能です。

排気ガスの浄化を行う装置はDPF以外にも種類がありますが、トラックメーカーによって搭載している装置が異なり、DPFを採用しているメーカーには三菱ふそうやUDトラックなどがあります。

・DPFの仕組み

DPF

DPFは排気ガスがフィルターを通る際に粒子物質が濾過されるようにフィルターに引っかかります。DPFのフィルターは10マイクロメートルほどの小さな穴なので、ほとんどの有害物質は通り抜けることができません。

DPFを使用し続けるとフィルターが目詰まりを起こしてしまいます。定期的にフィルターを交換するか、600℃以上の熱でPMを燃焼させることで機能が再生します。

フィルター内部に溜まった粒子物質は3通りの方法で燃焼させます。

①連続再生方式(自己再生方式)

排気ガスの熱エネルギーなどを利用して燃焼させる方法。

②間欠再生方式

電気ヒーターで燃焼する方法。

③添加剤再生方式

燃料に触媒を供給することで酸化反応を起こし、DPFの温度上昇によってPMを燃焼させる方法。

どれもDPFを温めることで濾過機能を再生させる処理方式で、セルフクリーニングとも呼ばれます。

トラックDPF

・DPF以外の種類

DPFの他に、「DPR」や「DPD」と呼ばれる装置もあります。

<DPRとは>

排出ガスを浄化する役割はDPFと変わらないものの、DPRはフィルターが目詰まりすると、ヒーターが燃焼して再生する機能も備えています。

DPFの進化版と考えるとよいでしょう。

<DPDとは>

排出ガス内に含まれる粒子物質(PM)を除去・浄化する装置です。DPD内のフィルターに一定量のPMが蓄積すると、燃焼して自動再生が行われます。

ただし、状況によって自動再生されない場合は、手動で再生する必要があります。

名称や構造に違いはあるものの、役割はすべて同じであると覚えておきましょう。

■もしかしてDPFの故障?症状と原因

DPF

DPFは2003年(平成15年)に新しいPM規制基準をクリアしないディーゼル車の走行が禁止されたことで注目を集めるようになりました。

排出ガス規制において非常に重要なDPFは耐久性も高くなっていますが、もちろん故障することもあります。

・DPFが故障すると

DPFが故障すると排気ガスの微粒子除去が正常に作動しなくなります。

DPFの故障原因の多くは先述のとおりフィルターの目詰まりです。フィルターが詰まり始めるとインジケータランプが点滅します。もし点滅をしたら、早めに再生作業を行いましょう。方法は以下の3通りです。

①停車

②高回転のアイドリング

③インジケータランプとDPF再生ボタンを押す

ただしインジケータランプが点滅から点灯に変わると自分で再生できなくなりますので、整備工場などで修理を依頼することになります。

DPFの不備はエンジンにも影響を与え、回転数が低下したりトルク不足や燃費が悪くなるなどの問題に繋がります。

・故障の原因

DPFが最適な状態であれば頻繁に故障することはありません。しかし、悪い状態が続くことで故障のリスクが上がってきます。原因となることが多い症状をご紹介します。

<低速走行・短距離走行の連続>

低速や短距離の走行は排気ガスの温度が上がりきらず、セルフクリーニングが行えなくなります。

<頻繁にエンジンを切る>

排気ガスが処理できていない状態で何度もエンジンを切ることでPMが溜まり続けます。

<長時間のアイドリング>

アイドリング中はセルフクリーニングが行えず、PMが溜まり続けます。

<渋滞>

渋滞が続くとエンジンの回転数が上がらず、セルフクリーニングが行えなくなります。

<経年劣化>

DPFは有害物質を熱処理するので、長期間の使用により経年劣化が進みます。

<エンジンが温まらない>

セルフクリーニングには高温の熱が必要なので、温まる前にエンジンを切るとセルフクリーニングが上手く行えません。

・メーカーごとの対処法(手動再生の仕方)

メーカーごとに手動再生の方法をご紹介いたします。

いずれの場合もエンジンは止めず、アイドリング状態を維持してください。

<日野>

DPRが採用されています。

インジケータランプの点滅後、150km以内に対処してください。

  1. トラックを安全な場所に停車
  2. 排出ガス浄化装置スイッチを押して手動再生を行う
  3. インジケータランプと「DPF再生中」の表示が両方消灯するまで15~20分ほど待つ

<トヨタ>

DPRが採用されています。

インジケータランプの点滅後、50km以内に対処しましょう。

  1. トラックを安全な場所に停車
  2. パーキングブレーキをかけ、シフトレバーは「N」に入れる
  3. 排出ガス浄化装置スイッチを押して手動再生を行う
  4. ランプが点滅から点灯に変わり、再生中の表示とともにエンジン回転数が上昇し、再生が開始する
  5. ランプが消灯し、回転数がもとに戻ったら走行可能ですが、再生まで15~40分程度かかる

<いすゞ>

DPDが採用されています。

  1. インジケータランプが点滅したら、安全な場所にトラックを停車
  2. パーキングブレーキをかけ、シフトレバーを「N」に入れる
  3. DPDスイッチを押す
  4. 手動再生の表示が点滅から点灯に変わり、エンジン回転数が上がれば、再生が開始される
  5. 「DPD手動再生」の表示が消灯したら走行可能ですが、再生まで15~20分程度かかる

<三菱ふそう>

DPFが採用されています。

インジケータランプが点滅したら、50km以内に対処しましょう。

  1. トラックを安全な場所に停車
  2. パーキングブレーキをかけ、シフトレバーを「N」に入れる
  3. インジケータランプが点滅から点灯に変わるまでDPFスイッチを押す
  4. エンジン回転数が上昇し、再生が開始される
  5. 10~25分ほどして、インジケータランプが消灯したら再生処理は終了

<日産>

DPFが採用されています。

  1. インジケータランプが点滅したら、トラックを安全な場所に停車
  2. パーキングブレーキをかけ、シフトレバーを「N」に入れる
  3. DPF手動再生スイッチを押す
  4. ランプが点滅から点灯に変わり、エンジン回転数が上昇するとともに、DPF再生処理が始まる
  5. 35分ほどすると再生処理が終わり、ランプが消える

<マツダ>

DPFが採用されています。

インジケータランプが点滅したら、30km以内に手動操作を開始してください。

なお、1~4の手順は10秒以内に行いましょう。

  1. トラックを安全な場所に停車
  2. パーキングブレーキをかけ、シフトレバーを「N」に入れる
  3. DPFスイッチを1~2秒ほど長押しする
  4. DPFスイッチから指を離す
  5. 指を離して1~2秒待ち、再びDPFスイッチを3秒以上押す
  6. エンジン回転数が上昇したのを確認し、PM除去が開始されたらスイッチから指を離す
  7. 10分ほど経過すると、再生処理が終了する
  8. DPF表示灯が消えたら走行可能

・DPFが故障したまま走行すると

国土交通省は、昭和41年から排出ガス規制を開始しました。

なお、規制は年々強化され、国内を走るすべての自動車を対象に、Nox(窒素酸化物)やPMなどの排出量を厳しく制限しています。

また、車検の項目にも排出ガス検査が含まれており、基準値を上回る自動車は車検に通りません。

トラックのDPFが故障したまま走行すると、整備不良として罰則の対象になるため、注意が必要です。

・DPFの修理費用はどれくらい?

DPFが故障した場合は、すぐに修理しましょう。

費用の目安は以下の通りで、車両が大きくなるほど金額が上がります。

<小型トラック>

部品代:40万円前後

<中型トラック>

部品代:60万円前後

<大型トラック>

部品代:100万円前後

なお、上記に工賃が加わります。

・故障の予防方法

エンジンの状態が最適であることが故障の予防に役立ちます。高速道路などを走行することでエンジンの回転数を上げ、高温処理ができるようになります。

DPFは地球環境やエコの観点から重要な役割を持っています。故障に気を付け、安全でエコな運転を心がけましょう。

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