安全を守るため、全日本トラック協会や交通安全協会も輪止めの使用を推奨しています。周囲の人々はもちろん、自分の命を守るためにも輪止めの正しい選び方や使い方を知っておきましょう。
今回は輪止めの役割とメリットをはじめ、正しい選び方や使い方までご紹介いたします。
■そもそも輪止めってどんなもの?設置は義務なの?
・輪止めとは
トラックを停車させる際に動き出さないよう、タイヤと地面のすき間に挟んで使用する道具が「輪止め」です。車輪止め、車止めなどとも呼ばれています。
・輪止めの役割とメリット
一般的な乗用車が停車や駐車をする場合はパーキングブレーキを使用するため、車が勝手に動き出すことは考えにくいでしょう。しかし、トラックなどの大型車が使用するエアブレーキは制動力が高いものの、時間の経過により効きが甘くなることもあります。
輪止めを設置することでタイヤの回転を阻止できるため、長時間停車する際は輪止めがあると安心です。輪止めには事故を防止するだけでなく、会社全体で輪止めの使用を徹底することにより、ドライバーの安全への意識向上にも役立ちます。
また、会社に対して信頼や安心といったポジティブなイメージを与えられるのもメリットでしょう。
■輪止めの必要性
・設置は義務ではない?
安全や信頼の確保において重要な輪止めですが、法律で設置が義務付けられているわけではありません。ですが、安全のため先ほどの事故事例のように社内規則としての装着を義務付けている運送会社が増えています。
過去には輪止めを設置せず業務を行なっていたため、思いがけない事故が発生した例もあります。義務ではないものの、トラックを運転するドライバーは輪止めの設置を心がけましょう。
・輪止めに関する事故の事例
平坦な道だからといって過信せず、トラックを駐車させるときは輪止めを使用する癖をつけしましょう。輪止めを使用しなかった際の事故の一例をご紹介いたします。
〈事故内容〉
輪止めを使用せずに駐車していた大型トラックが急に走り出し、数百メートルほど離れた電信柱に衝突して止まった。
〈原因〉
荷物降ろし作業で現場が混み合って順番待ちになるのを避けるため、自らが乗車していたトラックを降りて他のトラックの荷降ろし作業を手伝っていた。降りる際にうっかりしてサイドブレーキを引き忘れていたために起こった。
〈再発防止対策〉
会社の規則として駐車時には必ずサイドブレーキを引き、輪止めの装着を義務化した。
■輪止めの正しい選び方と使い方
・輪止めの素材と特徴
輪止めの素材は8種類あります。
① コンクリート製
② 廃棄樹脂プラスチック製
廃棄された樹脂やプラスチックを原料にしているため、最も安価な輪止めです。耐久性に優れており、さまざまな形状があるので、会社だけでなく一般家庭でも使用されています。
③ ゴム製
一般的に普及しているのがゴム製の輪止めです。グリップ力が高く、降雪時でも高い制動力を発揮します。安価で入手しやすいのもメリットです。
④ ポリウレタン製
廃棄樹脂と同様、安価で耐久性に優れた使い勝手のよい輪止めです。サイズが豊富にあるため、運転する車に合わせて選べます。
⑤ 木製
木製の輪止めは古くから使用されており、人気があります。紐でつながった状態の輪止めをタイヤの前後にはめ込んで固定する方法で使用します。
⑥ プラスチック製
形や色の種類が豊富なうえ、軽くて耐久性にも優れているので、多くの現場で使用されている輪止めです。
⑦ 鉄製
鉄製の輪止めは折りたたみ式のものが多く、素材の割に軽い使い勝手のよさがメリットです。ただし、水気のある場所では滑りやすいので、時期や季節によっては他の素材を使用しましょう。
⑧ アルミ製
この中で一番人気の素材はゴム製です。
ゴム製は他の種類に比べて耐久性があり滑りにくく、雪が積もっていても使えるのでシーンに合わせて使い分ける必要がありません。また、低価格なのでコスパにも優れています。
・値段
一般的な輪止めの価格は以下のとおりです。
【輪止め1個売り】 約1500円
【輪止め2個セット】 約3000円
まとめ買いのセットを選ぶと1組分が少し安くなるケースもあります。
・輪止めは呼び方が複数
輪止めには色々な呼び方があります。
〈タイヤストッパー〉
大型車両によく用いられるタイヤストッパーは地面や足元が不安定な工事現場で活躍します。
〈車輪止め〉
簡単に装着できることから、多くのトラックに用いられます。
〈カーストップ〉
カーストップは別名カーストッパーともいい、トラックターミナルや工場などで使用されています。
・輪止めのサイズ
〈大型トラック用の輪止めサイズ〉
標準的なサイズは、長さ240mm、高さ130mm、幅120mm程度です。
〈小型・大型トラック用の輪止めサイズ〉
標準的なサイズは、長さ200mm、高さ120mm、幅100mm程度です。
・輪止めの使用方法
輪止めの使用方法は2通りあります。
1つ目は後輪の1つを前後から挟む方法です。
トラックの後方は死角になりやすいため、輪止めを外す動作とともに安全確認ができます。最もポピュラーな使用方法と言えるでしょう。
2つ目は右側の前輪に挟む方法です。右側の前輪は運転席の真下にあるため、トラックを降りてすぐに輪止めを設置できます。
輪止めは正しく使用することで効果を発揮します。タイヤが固定できていないと動き出したタイヤが輪止めを弾いてしまい、かえって事故につながってしまう恐れがあるため、注意しましょう。
・輪止めの外し忘れに注意!
急いでいるときや輪止めを設置する習慣が身についていないうちは、輪止めを設置したことを忘れてトラックを発進させてしまいがちです。素材によっては踏みつけた拍子に割れてしまい、破片が人やものに当たって事故につながる可能性があります。目立つ色の輪止めを設置したり、わかりやすいところに輪止めを設置しているサインを置いたりなど工夫をしましょう。
安心と安全のため、輪止めはトラックに欠かせません。輪止めの設置は義務付けられていませんが、安全や信頼の確保、ドライバーの意識向上のためにも取り入れてみてはどうでしょうか。
命と荷物、信頼を守るためにも輪止めを使って安全に配慮しましょう。