
トラックを安全に運転するには、さまざまなトラブルに備えておくことが大切です。
フェード現象もトラックの安全に大きくかかわるため、運転する際は注意しましょう。
今回はフェード現象を防ぐ方法や対処法について、ペーパーロック現象との違いも併せてご紹介いたします。
■フェード現象とは、どんな現象?
まずは、フェード現象についてご紹介いたします。
・フェード現象とは
フェード現象はブレーキが利きにくくなる現象を指し、長い下り坂などを走行中にフットブレーキの摩擦力のみで減速することにより起こります。
なぜなら、ブレーキパッドのゴムや樹脂が耐熱温度を超えた際に発生するガスがブレーキローターに挟まり、摩擦力が低下するからです。
なお、トラックのブレーキは「ディスクブレーキ」と「ドラムブレーキ」の2種類に分かれており、フェード現象はドラムブレーキのほうが起こりやすいと言われています。
・ディスクブレーキとドラムブレーキ
ディスクブレーキは、ブレーキパッドがタイヤとともに回るディスクローターを挟んでスピードを制御する仕組みです。
一方でドラムブレーキは、ドラムの内側に付けられたブレーキシューが、内側から外側に圧力をかけることで制御力を発揮します。
ドラムブレーキにフェード現象が起こりやすいのは、放熱する力が弱いためです。
そのため、前輪にディスクブレーキ、後輪にドラムブレーキと分けられているトラックも少なくありません。
・ペーパーロック現象と何が違う?
フェード現象が起きているにもかかわらずフットブレーキを使い続けると、ペーパーロッグ現象に至ります。
ペーパーロック現象とは、ブレーキが全く働かなくなる現象のことです。
ブレーキパッドの摩擦熱によってブレーキオイル(ブレーキフルード)が沸騰した結果、気泡が発生して油圧を阻害することにより起こります。
■フェード現象を防ぐ方法はある?

フェード現象やペーパーロック現象に至らないためには、日頃からトラックのメンテナンスを行い、安全を意識した運転を心がけることが大切です。
・エンジンブレーキを利用する
エンジンブレーキとは、アクセルから足を離したときに車が自然と減速する仕組みで、シフトダウンを併用すると効力が強くなります。
摩擦熱の発生や部品の摩耗を防げるので、意識して活用しましょう。
・坂道の走行中は速度に注意
下り坂は自然に加速するので、フットブレーキに頼りがちです。
しかし、フットブレーキの多用はフェード現象の発生につながるので、速度を出しすぎないように注意する必要があります。
エンジンブレーキで減速し、ギアを低速に入れて速度を抑えましょう。
・ブレーキ関連のメンテナンス
ブレーキオイルを長く使用しているとオイルの沸点が下がりやすくなり、フェード現象が頻発する可能性を高めます。
トラックの走行状況にもよりますが、2年に1度を目安に交換しましょう。
また、ブレーキパッドを交換することも大切です。
「キーキー」と音が鳴り出したら、早めに対応してください。
■フェード現象が起きてしまったら

フェード現象が起きてしまったときは、慌てずに対処しましょう。
・フェード現象の対処法を知っておこう
ブレーキの熱を下げるために、トラックを安全な場所に停めて、30分ほど様子を見ましょう。
高速道路などの場合は、エンジンブレーキやハンドブレーキを使い、徐々に減速してください。
・トラックのブレーキシステムについて
車体が大きくなるほど、高い制動力が必要です。
制動力は、ブレーキに使用される圧力の性質や補助ブレーキの有無によって変わります。
<油圧式ブレーキ>
普通自動車や小型トラックに採用されています。
ブレーキペダルを踏んだ力がマスシリンダーによって油圧へ変換され、パイプやホースを通じてブレーキドラムやキャリパーに伝わり、制動力を生む仕組みです。
<エアブレーキ>
油圧ブレーキよりも制動力が高いので、中型や大型トラックに採用されています。
ブレーキを踏む力に、油圧でなく圧縮した高圧の空気を用いる仕組みです。
<リターダー>
主に大型のディーゼル車に採用されている、補助ブレーキの総称です。
ブレーキをかける前の減速を手助けする役目を担います。
フェード現象を無視して走行を続けると、いずれブレーキが正常に働かなくなり、大惨事を招く恐れがあります。
どんなに急いでいても、1度休んでブレーキの熱を冷ますことが大切です。