トラッククレーンの基礎知識を解説!種類や必要な免許とは?

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主に工事現場や建築現場で利用されているトラッククレーン。近年ではオールテレーンクレーンが主流になりつつありますが、まだまだトラッククレーンは活躍しています。それほどトラッククレーンは非常に便利な特殊車両です。

今回はトラッククレーンがどのような車なのかと、所持するにあたって必要なことをあわせてご紹介いたします。

 

■そもそもトラッククレーンとは

トラッククレーンとは一般的なトラックに架装としてクレーンを乗せたものを指します。街中で走っている姿を見かけたことがある方もいるのではないのでしょうか。トラッククレーンは身近なところでも活躍しているトラックです。

・トラッククレーンの種類について

トラッククレーンには「汎用クレーン」と呼ばれるトラッククレーンと、「キャブバッククレーン」と呼ばれるクレーン車の二種類があります。この二つの違いはなんなのか、解説いたします。

トラッククレーン…車両の荷台部分にクレーンと操作室を搭載しており、運転席は別になっています。普通のトラックにクレーンを架装しているため、一般的なトラックと変わらない速度で走ることが可能。走力があるため、移動が簡単で、様々な現場で重宝されている。

クレーン車…クレーンの操作室と運転席が一緒になっているので、運転席からクレーンを操作する際に移動をしなくてもいいという特徴があります。車両のタイヤは大きいのですが、走行速度は一般的なトラックに比べ非常に遅いので、移動の際は分解が必要であったり、誘導車が必要になることがあります。

・ユニック車との違い

同じような機能を持つ車で、「ユニック車」という車があります。ユニックとは小型のクレーンを架装したトラックの通称です。一般的なクレーン車であれば運転席とクレーンの操縦席が一緒になっていますが、ユニック車はクレーン車とは異なり運転席とクレーンの操縦席が別々になっています。なお、ユニック車もトラッククレーンの一種として分類されます。

・高所作業車との違い

シャーシに高所作業用リフトを架装している車両が高所作業車です。昇降装置と走行装置に加えて、動力により2m以上も上昇する作業デッキを備えている点が特徴であり、トラッククレーンとの違いでもあります。

高所作業車は主に窓ガラスの清掃や電線の交換などのメンテナンス作業、舞台や照明装置のセッティングなどで使用される車両です。

車両自体に走行性能を備えた自走式と、トラックのシャーシに作業デッキが架装されたトラック式の2種類があり、トラック式は車両登録を行えば公道を走行できます。

・油圧式と機械式について

クレーンの動力部分は油圧式と機械式の二種類があります。

油圧式…油圧式はクレーンに関する機能全てを油圧機構で動かしています。小さな油圧ポンプでも大きな力を出すことが出来ますので、トラックとしての機動性とクレーンとしての性能を兼ね備えたトラッククレーンには非常に相性がいい駆動システムと言えます。

ブームの伸縮が運転席から行うことが可能なので、機械式よりも素早い伸縮を行うことが出来ます。

機械式…ブームがトラス式と呼ばれる、複数の三角形で骨組みを作られた構造を持っています。そのためトラスブームという機能が使用でき、吊り上げ能力が非常に高く、長尺ブームの使用も可能です。

近年の主流として機械式のトラッククレーンは減少傾向にあります。現在は油圧式の機構を機械式にも導入した、「複合式」が主力となっており、この二種の判断は構造的なもので分けられている状態です。

■トラッククレーンの装置

青クレーン車数台

トラッククレーンの車両には、さまざまな装置が取り付けられています。

・車両本体

小型のトラッククレーンは標準的なトラックのシャーシに、クレーンメーカーが製造したクレーン装置を架装しています。一方、大型のトラッククレーンは専用に開発・製造されたシャーシが採用されています。

同レベルのクレーン装置であれば、どれを選んでも能力に差はありません。そのため、車体の好みに合わせて選べます。

・旋回フレーム

上部旋回体のベースとなる部分で、「クレーン装置を構成する基礎」とも言えます。フレームには操作室やジブ、ジブを取り付けるブラケット、巻き上げ装置、カウンターウエイトなどが装備されています。

旋回フレームは旋回サークルに架装されており、左右に旋回する仕組みです。

・アウトリガー

アウトリガー

アウトリガーは、クレーンを操作する際に車両の安定性を確保する目的で使用するものです。そのため、作業中はアウトリガーの張り出し幅を常に最大にしておくことが求められます。

また、多くのトラッククレーンのアウトリガーには油圧式が採用されていますが、ユニック車のような積載型の場合は、横の張り出しを手動で行うケースが多く見られます。

・クレーン装置

上部旋回体とジブ、バケット、フックなどのフロントアタッチメントで構成されています。巻き上げ、起伏、旋回などの動作が可能です。

<巻き上げ装置>

ワイヤーロープを巻き取ったり巻き戻したりする装置です。

巻き上げ装置は油圧モーター、減速装置、ドラム、ブレーキなどで構成されており、円筒形のドラムにワイヤーロープが巻き付けられています。油圧モーターによりドラムを回転させ、ワイヤーの巻き上げや巻き下げを行う仕組みです。

<ジブ>

ブームとも呼ばれ、油圧シリンダーや伸縮ワイヤーロープ、チェーンなどを併用して伸縮させます。取り付けられている根本を支点にジブが起き上がるほど地面からの傾斜が大きくなり、作業範囲は狭くなります。

<クレーン操作室>

トラッククレーンは、キャビンとは別にクレーン操作室が設けられています。操作室には操作レバーのほか、ペダルやスイッチ、計器類が配置されています。

■トラッククレーンが役立つ場面

トラッククレーンの強みは何と言っても移動が容易でありながら、架装次第で5~300tもの重さの荷物を運ぶことが出来ることです。機動力と実用性が高いトラッククレーンは様々な現場から引っ張りだこになるほど人気があります。

・土木建築現場

トラッククレーンは主に高所への資材搬入、柱の組み立て、荷物の吊り上げをメインに使用されています。よって建築や土木関連の工事現場をメインに活躍しています。業種としては建築業者や解体業者が多く、個人で使用される機会は非常に少なくなってきています。

・その他の活躍現場(けん引、運送)

トラッククレーンは荷物を吊り上げるだけでなく、吊り下げることも可能なため、事故や故障で自力での走行が不可能になった不動車の撤去作業を行うこともできます。

運送業では重量物の運搬や現場での荷下ろしに使用されていますし、石材業ではトラッククレーンを利用してお墓の修復や引越しをしたり、石材の運搬を行います。設備工事業では電力会社の電柱の補修や点検、工事現場の点検や修理を行う際に利用されています。

これほど様々な種類の業種から必要とされるトラッククレーンは、非常に需要が高いことを物語っています。

■クレーン車を操作するにあたり必要なこと

需要の高いトラッククレーンですが、運転するには必要な免許があります。

・クレーン免許の取得

トラッククレーンを運転するには移動式クレーンの資格が必要となります。

更に免許を取得しても、吊り下げる重量によって数種類の資格がありますので、自分の職種に求められる重量を把握したうえで、必要な資格を選びましょう。

①道を走行する資格

吊り荷の重さが5t以下のトラッククレーンは普通自動車免許。最大積載量が5t以上のトラッククレーンは大型自動車免許が必要。

※なお、建設現場でよく使われている4tトラックは中型トラックに分類され、平成19年6月2日以降に普通免許を取得した人は普通免許とは別に中型免許を取得する必要があります。

②荷物を吊って移動させる資格(吊り上げられる荷物の重さに関する資格)

移動式クレーンの運転義務特別教育終了…1t未満

小型移動式クレーン運転技能講習終了…5t未満

移動式クレーン運転免許…5t以上

なお、受講する講習が助成の対象になっている場合、免許をとるための助成金が出ることがあるのでまだ免許をとっていない方は必ずチェックしましょう。

ちなみにクレーン作業必須である、荷物をクレーンのフックに引掛ける玉掛技能講習を先に取得しておくと、小型クレーン運転技能講習の受講時に実技や学科の講習が免除されるので、免許の取得を早めることができます。

■クレーン車を操作するにあたり必要なこと

・取得方法と費用について

クレーン車コントロール部分

<移動式クレーンの運転業務特別教育修了>

つり下げ荷重1t未満の移動式クレーンを操作する際に必要な資格です。移動式クレーンに関する知識のほか、関係法令などを学びます。

資格の取得費用は14,000円ほどです。

<小型移動式クレーン運転技能講習修了>

つり下げ荷重1t以上5t未満の移動式クレーンを操作する際に必要な資格です。3日間の講習を受け、試験に合格すると取得できます。

資格の取得費用は32,000円ほどです。

<移動式クレーン運転士免許>

つり下げ荷重5t以上の移動式クレーンを操作する際に必要な国家資格です。小型移動式クレーンの資格を取得していれば、一部の講習が免除されます。

資格の取得費用は20,000円ほどです。

・クレーン検査

自家用車で例えるなら、車検のようなものです。

クレーン検査はクレーン等安全規則第41条、労働安全衛生法第41条2項により定められています。

トラッククレーンを含むクレーン車は労働災害防止のため、定期的に性能検査を受ける必要があります。点検は以下の通り行わねばなりません。

①毎月一度(月例点検)

②毎年一度(年次点検)

  • 年に一度(クレーン継続検査)
  • 使用する前(始業前点検)

クレーン車の点検には専門的な知識が必要なこともあります。性能検査を請け負っている業者がありますので、無理に自己点検をするのではなく、業者を上手に利用した方が確実ですし、作業も安心して行えます。

事故やトラブルを防ぐためにも、点検は必ず行いましょう!

・まとめ

このように、トラッククレーンは土木建築業以外にも様々な場所で必要とされ、活躍している素晴らしい特殊車両です。

そんな素晴らしいトラッククレーンに、あなたも乗ってみたくはありませんか?

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