フォークリフトの先端についている爪(フォーク)部分を支える支柱のことをマストと呼びますが、マストにも種類があることをご存知でしたか。マストは3種類あり、用途によって使い分けることが大切です。
今回はフォークリフトのマストについてご紹介いたします。
■フォークリフトのマスト、3種類について
まずは3種類のマストについてご説明いたします。
・マストの種類について
マストの構造はフォークが装着しているインナーマスト、レールの役割を果たすアウターマスト、フォークの上下運動をさせるシリンダと呼ばれる部分に分かれています。
マストが異なることで、用途の目的や、荷物を上下させることができる高さが変わります。
①スタンダードマスト
一般的なマストの種類でSTDマストとも呼ばれます。フォークリフトの標準装備である場合、スタンダードマストが付いています。
価格、視界の開け方、メンテナンス性のバランスが取れたタイプで、揚高はフォークリフトの種類によって多少の違いはありますが、大体2,500~3,000mmくらいに設定されています。
②ハイマスト
スタンダードマストよりも揚高設定が高いマストで、高所に荷物を上げる際に利用されるタイプです。ハイマストの場合、メーカーや種類によって差はありますが、およそ3,000~6,000mmの高さまで荷物を上げることが可能になっています。
③フルフリー3段マスト
フルフリーマストは上記のスタンダードマストとハイマストとは異なる構造をしています。
フルフリーマストではフォークが最上位まで上がると、次に2段目のマストが上昇をします。スライド式の梯子のようになっていると説明すると分かりやすいでしょうか。
フルフリー3段マストは上昇するマストが3つあります。フルフリーという機能があるため、荷物を一定の高さまで持ち上げても車高が上がりません。他のマストはフォークを上げると同時にインナーマストが上昇するため、車高が高くなります。
揚高は種類によって異なりますが、およそ4,300~6,000mmくらいに設定されています。
■ハイマストとフルフリー3段マストのメリット
ハイマストとフルフリー3段マストのメリットは何があるのか、こちらでご紹介いたします。
・ハイマストのメリット
高くまでフォークを上げることができますが、フルフリーマストタイプとは異なりシリンダがなく視界が開けていることが挙げられます。
・フルフリー3段マストのメリット
フルフリーマストの機能を上手く使うことで狭い場所でも通行が可能な点が挙げられます。
限られた場所で荷物の上げ下ろしが可能なため、コンテナなどの狭い場所で使うことができることもメリットといえます。
フォークリフトを使う場所によって、どちらが向いているのかを検討しておかないとハイマストでは通れないなどトラブルが起こってしまいます。
■フォークリフトのマストで多い事故とは?
フォークリフトは倉庫や物流に欠かせない存在ですが、毎年事故が多発しているため、取り扱いには非常に注意が必要です。最後にマストの事故についてご紹介いたします。
・高さを忘れて走行
よくある事故の一つが、フォークの高さを忘れて走行してしまうということです。
これは初心者、熟練者問わず起こりがちな事故の要因になっています。
荷物を積んだまま走行するとバランスを崩して転倒しやすくなるほか、出入り口などにぶつかってしまうことがあります。
フォークリフトを走行させる際は必ずフォーク部分を下げ、マストも下がっていることを確認しましょう。
・マスト周りは必ず空けて置こう
荷台からフォークリフトの運転席に移動する際、荷台部分からマストの間を通って移動していませんか?
移動中にレバーが体に触れると、動き出したマスト部分に頭部を挟まれかねません。これは実際に死亡事故が多発している事故でもあります。
安全にフォークリフトを使うためにも、移動は面倒でも必ず一度地上に降りてから作業をしましょう。
巻き込まれないためにも、マストの周囲には何も置かないことを心がけることが大切です。
■フォークリフトのマストの高さについて
フォークリフトを操作する際に気を付けたいのがマストの高さについてです。
マストは種類ごとに高さが異なることはご紹介しましたが、他にも気を付けたいことや覚えておきたいことがありますので、こちらでご紹介いたします。
・ディーゼル車とバッテリー車で異なるフォークリフトのマストの高さ
1,500kgあるフォークリフトのマストの高さは平均で1,970㎜~1,995㎜と、メーカーごとに若干の差があるようです。
マストの高さはディーゼル車とバッテリー車の場合でも異なります。
同じ重量のフォークリフトを動力の違いで比較すると、ディーゼル車の方がやや高めの設定となっていますが、理由は設計上の誤差となります。
・マストの高さ制限
フォークリフトを毎日操作していると、つい忘れてしまいそうになるのがマストの高さ制限です。倉庫など、フォークリフトを使う場所によってマストの高さ制限が設けられているので注意しましょう。
荷物を積みながら走行する際は、事故を防止するために必ず床から15~20cm程度の高さまでフォークを下げ、マストを後ろに倒すよう徹底してください。
日頃から自分が走行している場所の高さ制限を意識する癖をつけておきましょう。
・制限がある場所での対策
「高い場所にある荷物を取りたいけれど天井にぶつかりそう…」そんな時はフルフリー機能が付いているフォークリフトの導入を考えてみてはいかがでしょうか。
フルフリー機能付きのフォークリフトの特徴は、マストの高さを変えずにフォークだけを最大の高さまで上げることができる点です。三段マスト機能とフルフリー機能がどちらも付いているタイプであれば、高い場所の操作でも非常に活躍します。
・高さ制限をうっかり忘れないためには
うっかり高さ制限を忘れそうになる場合は、忘れないような対策することが大切です。
例えば目につきやすい柱などに、高さ制限があることを表示するテープを貼っておくなどが挙げられます。最近は高さ制限のガードを設置しているところもあるようですが、硬い素材のガードを設置すると、フォークリフトがぶつかった際に転倒してしまう危険性があります。ガードを設置する場合は素材や周囲の状況にも気を付けておきましょう。
■フォークリフトはマスト以外にも注意しよう
フォークリフトの操作で気を付けたいことはマストの高さ以外にもたくさんあります。こちらではマストの高さ以外の注意点を3つご紹介いたします。
・チルト操作
フォークリフトのマストは前後に倒すことが可能。この役割を果たすのが「チルト機能」です。荷物を下ろすときはマストを前に倒し、走行中は後ろに倒して荷物を落ちにくくするための機能です。
荷物を積んでいる状態で、マストが前方に傾いているとバランスが取れず非常に危険です。チルト機能を利用する際は地上から10cmまでの近い距離でしか行わないこと、荷物の上げ下げをする際はマストが斜めになっていないことを必ずよく確認しましょう。
・安全な服装
フォークリフトを操作する際は服装にも気を付けてください。労災防止のために必ずヘルメットや保護帽を着用しましょう。ヘルメットは顎部分のひもが緩んだ状態にならないよう、しっかり調整することも忘れないでください。髪が長い場合は視界を遮らないよう後ろにまとめておきます。怪我をしないよう必ず長袖長ズボンを着用し、足元はサイズの合った安全靴を履くようにしましょう。
・ヘッドガードについて
ヘッドガードは頭上から荷物が落ちてきた際に運転者を守るための装置です。通常、フォークリフトには標準で装備されています。ヘッドガードは条件次第で必須ではないこともありますが、安全性を高めるためにも改造や外すことは避けてください。
フォークリフトのマストは非常に重要な部分です。気を抜いて運転をしていると熟練のドライバーであっても大きな事故に繋がりかねません。
マストの高さがあるものは、必ず走行前にフォークを下すように意識することが事故を防ぐためには必要です。可能であれば倉庫内でフォークの位置を確認できるように、柱などにテープを貼るなどの工夫をしましょう。
また、フォークリフトの運転時は必ずヘルメットの着用をするようにして下さい。