仕事で使うトラックを含め、車はメンテナンスが非常に重要です。
前回はいつ、エレメント交換をしたか覚えていますか?普段メンテナンスをきちんとしていれば問題ありませんが、いつ交換したか覚えていない、またはエレメント交換が何のことかよくわからないという方は一度エレメントの確認を行いましょう。
今回はエレメント交換についてご紹介いたします。
■エレメントとは
エレメントはエンジン内で非常に重要な存在です。
・エレメントとは
エレメントとは「オイルエレメント」のことで、エンジンオイルの汚れをろ過してきれいにするフィルターのことです。役割から、エレメントは別名「オイルフィルター」とも呼ばれています。
エンジンオイルはエンジン内の潤滑、冷却、洗浄、防錆、密閉の5つの役割を担っており、エンジンを動かすとエンジンオイルも作動します。エンジンは使っているうちに金属片や汚れをオイルに溜めてしまうので、エンジンオイルがきれいな状態を長く保つためにはエレメントが必要不可欠です。
・エレメント交換をしないとどうなる?
エレメントを交換しないと、オイルがろ過されなくなってしまいます。すると、エンジンオイルが汚れて5つの役割が正常に機能しなくなり、エンジンへの負荷が大きくなることで燃費が低下します。エンジンへの負荷が大きくなるとエンジンの寿命も縮んでしまいます。また、悪化するとエンジンが焼き付き、トラックが動かなくなることもあります。エンジンの交換が必要になると修理費用で100万円以上かかることもあるので、必ず定期的にエレメントを交換するようにしましょう。
■エレメント交換について
エレメント交換を行うのはどのようなタイミングが良いのでしょうか。
こちらではエレメント交換について時期や費用、注意点をご紹介します。
・交換時期
エレメントの交換目安は3種類あります。
①オイル交換時の2回に1回は交換する
②走行距離が2万kmになるごとに交換する
③同じエレメントを使用してから1~2年の間に交換する
長距離トラックを運転している方は走行距離で、あまり長距離運転しない方は使用期間やオイルの交換時に併せて行うなど、普段の使用方法から適したものを選びましょう。
また、走行距離はあくまでも目安なので1万kmで交換をするとより安心して走行できます。長くても、3万kmになる前には交換するようにしましょう。車体が小さな4tまでのトラックは1.5万kmくらいで交換することが望ましいです。
・交換にかかる費用
エレメントの交換にはエレメント本体の費用と工賃、エンジンオイルの交換費用が必要です。エレメントは1,000~3,000円程度でありますが、種類や交換する店舗によって異なります。工賃はエレメント本体と同じくらいになり、エンジンオイルは交換を含めて1,500~5,000円ほどかかります。目安として合計6,000~7,000円程度になると予想されます。
エレメントを交換する時は、エンジンオイルの費用も考えておかなくてはなりません。
エンジンオイルは車両が大きくなるほど必要な量が増えるので高額になります。
大型トラックは車両差が大きいので、自分のトラックにどれくらいのエンジンオイルが必要かを必ず調べておきましょう。
・エレメント交換の注意点
エレメントを交換すると、エンジンオイルも一緒に抜けてしまいます。そのため、エレメントと一緒にエンジンオイルも交換することになります。店舗などではエレメントとエンジンオイルの交換をセットで請け負っているところが多く、同時に交換しなければ対応してもらえないということもあります。
エンジンは自動車の心臓部と呼ばれるほど重要な場所です。長く安全にトラックを使うためにも、必ずエレメントの交換を行うようにしてくださいね。
■エレメントは自分で交換できる
・必要な道具
エレメントの交換には以下の道具を使用します。
【必要な道具】
- 新しいエレメント
- 新しいエンジンオイル
- 新しいドレンワッシャー
- エレメントレンチ
- メガネレンチ
- 廃油処理ボックス
- ウエス(拭き取り用)
- ジャッキ
【あると便利なもの】
- オイルジョッキ
- マグネット式ドレンボルトキャッチャー
エレメントの交換中はオイルが服に付いてしまう可能性があるため、事前に汚れても構わない服に着替えておきましょう。必要があれば軍手も用意してください。
・自分で交換するときの手順
はじめに1~5分ほどアイドリングをしておくと、エンジンオイルが滑らかになるのでおすすめです。周辺にオイルが飛び散る可能性もあるため、廃油処理ボックスの下に新聞紙を敷いておきましょう。
【オイルの抜き取り】
- ジャッキを使って車体を持ち上げる
- エンジンの下をのぞいてオイルパンの位置を確認する
- 廃油処理ボックスを設置する
- メガネレンチでドレンボルトを緩める
- メガネレンチまたはマグネット式ドレンボルトキャッチャーを使いドレンボルトを外す
- エンジンオイルを抜く
- ドレンボルトに付いたオイルをウエスで拭く
- ドレンボルトに新しいワッシャーを付ける
- メガネレンチを使いドレンボルトを締め戻す
【エレメントの交換】
- エレメントの下に廃油処理ボックスを設置する
- エレメントレンチを使ってエレメントを外す
- エンジンオイルがこぼれ出るので出し切る
- ウエスを使い、エレメントの取付部分に付いたオイルを拭く
- 古いエレメントのOリングが取付部分に残っていないかを確認する
- 新しいエレメントのOリングにエンジンオイルを塗る
- メガネレンチを使い、新しいエレメントを取り付ける
- 新しいエレメントやドレンボルトの周辺を拭く
- 廃油処理ボックスを車体の下から移動させ、ジャッキを降ろす
【エンジンオイルを注入する】
- オイルフィラーキャップを外す
- オイルジョッキを使って新しいエンジンオイルを注入する
- オイルレベルゲージでオイルの量を確認する
- オイルフィラーキャップを締める
- エンジンをかけて1~5分ほどアイドリングをする
- エンジンを止め、再びオイルゲージで量を確認する
ドレンボルトは一気に外さず、指で回せるようになったらマグネット式ドレンボルトキャッチャーで外すと手が汚れず、廃油処理ボックスにボルトを落とす心配もありません。
また、新しいエレメントのOリングにオイルを塗るのは、取り付け時にゴムのヨレを防ぐためです。
・自分で交換するときに気を付けること

ドレンボルトを目一杯に締めると、オイルパンの故障につながるので注意しましょう。力加減のしやすいデジタルトルクレンチの使用もおすすめです。
また、ドレンワッシャーの再利用はエンジンオイルの漏れにつながる恐れがあるため、必ず交換してください。この他にもいくつかの注意点があります。
- やけど防止のため、エレメントの交換作業は運転直後を避ける
- エンジンオイルの量は8分目を目安にする
- ジャッキアップは平らな場所で行い、必要に応じて輪止めなどの道具も使用する
- 抜き取ったエンジンオイルは自治体のルールに基づいて適切に処分する
・エレメントの処分
エレメントは自分で処分することも可能ですが、慣れていないと手間や時間がかかります。
自治体や整備工場、エレメントを購入したカー用品店などに引き取りを依頼しましょう。
■エレメントの種類
・フルフロータイプ(カートリッジタイプ)
カートリッジタイプはむき出しのろ紙とOリングがセットで売られており、中身だけを交換します。エレメントの容器の中にろ紙があれば、カートリッジタイプです。
・フルフロータイプ(スピンオンタイプ)
まるごと交換するタイプで、金属製の容器の中にろ紙が入っています。ガソリン車に多く普及しています。
・フルフロー・バイパス併用タイプ
ディーゼル車に多く普及しているタイプです。フルフローフィルタとバイパスフィルタが併設されており、フルフローフィルタだけでは逃してしまう小さな汚れもキャッチします。
・コンビネーションタイプ
フルフローとバイパスのフィルタを合体させたタイプです。現在ではこのタイプを採用するディーゼル車が増えています。内部は複雑な構造をしているものの交換作業が1度で済むため、コスト削減に役立ちます。