免許の取得には条件があり、準中型、二種、中型、大型の免許には「深視力」が必要になります。もし一定の基準を満たしていない場合は、免許の取得ができなくなるため注意が必要です。
今回はこれから免許を取得したいと考えている方に向けて、深視力とはどのようなものかをご説明いたします。
■深視力とは
深視力はどのようなものかをまずご紹介いたします。
・深視力とは
深視力とは「両眼視機能」と呼ばれる目の能力の一つです。遠近感や立体感に係る検査で、大型免許、中型免許、準中型免許、けん引免許、二種免許の取得・更新時に検査が必要とされています。
物体が動いた場合の遠近感や立体感を測る検査で、車間距離や走行時の車、標識、信号機などの距離感を正確にとらえる能力を調べるために必要です。
・免許の基準となる深視力
免許に必要な視力と深視力は下記のとおりです。
視力…両眼で0.8以上、片眼0.5以上
深視力…三桿方式で奥行知覚検査機によって2.5mの距離で3回検査して、その平均誤差2cm以下であること
三桿方式とは、箱状の検査機器の中に3本の棒が並んでおり、3本の棒が重なるタイミングでボタンを押す検査です。棒がどのくらいずれているかで深視力を判断します。
・なぜ深視力が必要?
深視力が必要となる車両は車体が大きいものが多く、事故を起こすと運転者だけでなく周囲にまで影響を及ぼす可能性が高くなります。深視力は動いている物体の把握に必要な能力なので、深視力が低いと近くに車や人がいた際に巻き込んでしまうリスクがあります。そのため、視力が正常であることが運転者としての責任を果たすために求められているといえるでしょう。
■試験で気を付けたいポイント
深視力の検査で気を付けたいポイントをご紹介いたします。
・目を休める
目が疲れている状態では、本来の目の能力や機能を発揮することができません。スマートフォンやパソコンなどを日常的に使う場合、試験の前日はできるだけ利用を控え、早めに就寝するようにしましょう。
若いうちは回復も早いですが、年齢を重ねるうちに回復に時間がかかることがありますので、その点も注意してください。
・事前検査を行う
眼鏡店によっては深視力の検査が行えるところもあります。事前に検査を行うことで自分の深視力がどの程度かを知ることができるだけでなく、どのような検査なのかを知ることにもつながります。実際の試験当日に勝手がわかることで、慌てずに落ち着いて試験に望むことができるでしょう。
・検査のコツはある?
事前に深視力の検査を受けることで、コツを掴もうと考える方がおられるかもしれません。実際に検査を経験すればある程度、成功のタイミングなどが掴みやすくなるでしょう。しかし、ご紹介したように、深視力は不足すると事故につながりかねません。コツを掴んで実際よりも高い深視力の数値を出した場合、事故のリスクが高まるといっても過言ではないでしょう。そのため、コツは掴もうとせずに正しい数値を測るようにしてください。
・もし試験に落ちたら
深視力の検査に落ちた場合、再検査の方法が2種類あります。
一つは試験の当日に時間を空けて再検査する方法ですが、一度目の試験により目が疲労しているため、本来の能力が発揮できない可能性があります。
もう一つは、日を改めて試験を受ける方法です。試験に落ちた際の視力を眼鏡などで矯正してから再度試験を受けることができます。そのため、検査に落ちている場合は矯正器具などの使用を検討してみましょう。
■深視力検査に落ちる原因
深視力検査を落ちた際に考えられる原因をご紹介いたします。以下は、深視力検査を落ちた方に共通する内容です。
・視力の不良
視力はあるのに、深視力が合わない方もおられます。この場合、近視や遠視、乱視が疑われるため、目のピント機能を矯正することで改善できるかもしれません。
・目の視力差
どちらかの視力が落ちている可能性があります。左右の見え方に差があっても、無意識に視力のよいほうで補おうとするため、気付きにくいかもしれません。
左右差があるほど深視力は合わないので、見え方の差をなくしましょう。
・眼球運動の不良
人はものを見る際、距離に応じて目を寄せたり離したりします。これを眼球運動といい、低下すると対象物の速度や距離に合わせて視線を動かしにくくなります。
・眼位の不良
左右の目のどちらかが正面ではない方向へ向く状態を斜視、片目の位置がわずかにずれている状態を斜位といいます。斜位は隠れ斜視とも呼ばれ、検査して初めて発覚することもあるようです。
斜視や斜位があると目の向きがずれ、正確な距離感を掴みにくくなります。
・深視力検査に慣れていない
深視力自体に問題がなくても、検査に慣れていない場合や疲れている場合は検査に落ちることもあります。
■深視力対応のメガネでよくなることもある
・深視力対応メガネとは
深視力対応メガネとは、目の機能を矯正し、遠近感や立体感を掴みやすくなるメガネです。
機能を単体で矯正するという単純なものではなく、目の屈折異常や調節機能、眼位といった総合的な検査の結果に基づいて作成されます。
状態によっては、深視力対応メガネをかけるだけでよくなったり、深視力対応メガネをかけて目のトレーニングを行うことによって改善に向かったりするケースもあるようです。
■日常的にできる深視力トレーニングのコツ
視力とは異なり、深視力は日常的にトレーニングを行うことで鍛えられます。こちらでは、簡単なトレーニング方法・コツをご紹介いたします。
・トレーニング法①距離の目測
場所を問わず行えるトレーニング方法です。
- 目の前にある対象物との距離を目測する
- メジャーを使って実際の距離を測る
コツが掴めると、距離感がわかるようになります。
慣れてきたら外出中に信号や向かいの人との距離を目測するのもおすすめです。
・トレーニング法②ピント合わせ
先ほどのトレーニングを少しレベルアップさせた方法です。
- 周囲を見渡し、どこになにがあるかを確認したら目を閉じる
- その状態のまま頭の中で対象を1つに絞り、体が対象物の正面を向くように角度を合わせる
- 目を開けたら素早く対象にピントを合わせて距離を推測する
- 実際の距離を測って確認する
・トレーニング③融像性を鍛える
融像性とは、両目に映ったものを1つの物体として捉える力や、ブレて見えるものに焦点を当てて1つの物体として見る力を指します。
- 腕を伸ばして人差し指をたて、目の高さにもってくる
- 指を近付けたり遠ざけたりを繰り返して目で追いかける
- 慣れてきたら指を360度動かして、目で追いかける
・トレーニング法④ストローゲーム
融像性を鍛えるトレーニング法を応用したゲームです。
- 2人1組になり、相手にストローを持ってもらう
- 自分はつまようじを持ち、ストローの穴につまようじを入れる
慣れてきたら距離を変えてチャレンジしましょう。
深視力は普段意識することがないため、自分がどれくらいなのかを知らない方は多いと思います。しかし、深視力は安全な運転には欠かせません。正しく検査を行い、安全な運転を心がけてくださいね!